〇いっきに距離を縮めて楽しい会話が続く
「よかったらこっちで飲みましょうよ」
デュエットを歌い終えた後、
50代女性から声がかかる。
実に理想的ないい展開である。
いよいよだ、マスターに声をかけて
席を移動する。
奥の側から50代女性、40代女性、私、
同僚、後輩の5人が並ぶ席の順となり、
40代女性と私と隣り合う形となった。
ここぞとばかりに40代女性に話しかける。
「この店、よく来るんですか?」
「今日は仕事の帰りとかですか?」
「よく飲みに行ってるんですか?」
次々に質問を投げかけ、
その都度あれこれとコメントを入れる。
とにかく女性に気分よく話をさせるのだ。


〇40代女性に飲みに行くデートを持ちかける

女性2人はかなり酒が入っているようで、
目つきがとろんとなっており、
話す言葉もとろとろになっている。
「やっぱり酒の席に男がいると楽しいわねえ」
と50代女性が言い、
40代女性が「そうねえ」と応じる。
ということは、男と飲みに行くことがない、
カレシ、もしくは夫がいないということか。
よっしゃ、ここでいくぜとばかりに
「よかったら今度いっしょに飲みに行きましょう」
と40代女性にLINEの交換を持ちかけた。
40代女性は「ああ、いいわよ」と
バッグからスマホを取り出した。
私もスマホを出し、自分のQRコードを表示する。



〇しかし、最後に大どんでん返しが待っていた

その時、店のドアが開き、男性が入ってきた。
私と同じ50代前半と思われる。
男性はまっすぐに私の隣に向かってくる。
身長が高く、肩まわりががっしりしており、
腹も出ておらず、全身がひきしまっている。
顔は優しい顔だちだが眼光が鋭い。
私もほんの少しだがボクシングをかじっており、
その男性に格闘技の経験オーラを感じた。
それも私よりも確実に上のレベルであろう。
40代女性がその男性に気づき、
「何してたん、遅いやん」と声をかける。
「車止めるとこなくて、時間くうたわ」
男性はそう言いながら、
私と40代女性を交互に見る。
私はその視線を感じながら黙ってスマホをしまう。
2人の女性は会計をして立ち上がり、
迎えにきたと思われるその男性とともに
店を出ていった。
あとで部長に聞いたところ、
その40代女性はその店の常連客で、
飲みすぎてつぶれかけた時は、
カレシに迎えに来てもらうのだそうだ。
カレシは酒が飲めないため、
40代女性はいつも単独か女性の友人と
飲みに来ているそうだ。